葬式のあり方とは

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葬式のあり方とは

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2020/02/09 葬式のあり方とは

つい先日、仏教界を揺るがす(というと大袈裟ですが)宣伝広告が某大手全国新聞紙に掲載され、話題を呼んでいます。今ここで私が宣伝する必要もないのですが、ご関心のある方は、こちらをご覧ください。

 

お坊さんのいないお葬式

 

結婚式でも、仏前式、神前式などいろいろある中で、人前式もあります。個人的には、実は仏前式と人前式の両方をしており(再婚したわけではなく、いろんな方へのお披露目にと、2回することになってしまいました-小さなパーティも含めると4、5回しました(苦笑)-)、どちらもそれなりに意味があったと思っています。仏前式はもちろん自坊の本堂で御本尊阿弥陀如来の尊前で誓いを立てる厳かな気持ちであり、人前式は恩師や友人の面前で婚姻届に署名するという身の引き締まる思いであり、どちらもなごやかに楽しく執り行うことができました。

 

お坊さんのいないお葬式はつまり人前式の葬式ですね。人前式の結婚式があるのだから、人前式の葬式があっても別にかまわないと思います。ただ、僧侶の私が申すのもなんですが、わざわざ「お坊さんのいない」という枕詞をつけるあたりに、営利企業のあざとさを感じてしまいます。「牧師さんのいない結婚式」とは言いませんものね、人前結婚式のことを。わざわざ目立つ言い方をなさったのだろうと思います。

 

とりわけ、結婚式と異なり、死をもってこの世に永遠のお別れをする葬式は、どこまで行っても宗教観が付きまとうというと語弊がありますが、宗教観なしに執り行うことはできないのではないかと思います。ですので、この「お坊さんのいない葬式」というのも、実は仏前式、神前式とは異なる新たな宗教儀式という意味合いがあるのではないでしょうか。

 

おそらく、この方式を選ばれる方は「うちは無宗教だから、これでいいや」というお考えもあろうかと思います。ですが、無宗教というのは本質的にはかなり責任の重いものです。一切の霊的なもの、人智を超えるものを否定するのが無宗教であり、ある意味無宗教という宗教でもあると言えるのです。私自身宗教に関する議論を外国の方としたことはありませんが、俗に言われるのは、「自分は無宗教だ」と気楽に言ってしまうと、「なぜ無宗教なのか」ということを根掘り葉掘り聞かれるそうです。

 

「そんな重たい話じゃないよ、お坊さんの読経をただ退屈しながら聞いていくらかお布施を払うのがもったいないだけでね」ということかもしれません。おそらくそういう方が増えているのだろうとは思います。

 

以下は、あくまで僧侶としての私見です。

 

葬式を2回できる余裕があるなら、昔ながらの宗教儀式としての葬式と、人前式的な偲ぶ会の両方をなさるとよいかと思います。有名人に多いですね、密葬として葬式はして、その後偲ぶ会をする。

 

「だから余裕はないんだよ」ということであれば、1回でかまいません。昔ながらの葬式は、お通夜をしてその後みんなで食事をして故人の思い出話などに花を咲かせ、笑い合うこともよくあります。そして葬式。終わればまた仕上げの席で、皆でワイワイ故人に対する想いを胸に、楽しく過ごします。私も時折そういった席にお招きいただきますが、故人の人柄などが偲ばれて、いい式だなと感じることが少なくありません。とりわけ先代からの付き合いなどで私自身あまり故人の人柄を知らないときには、「皆さんに好かれていたんだなあ」と思うこともしばしばです。

 

通夜・葬式が退屈だというのは、故人に対する思いとの関係では、そうは言えないはずです。僧侶の読経が退屈、というのは、ちょっと本筋から外れている感じがします。お経を上げる技術に上手い下手はあるでしょう。喉の調子が悪く、声が出にくいこともあります。下手だったり変な声だと聞くに耐えないこともあるかもしれません。

 

とは言え、ご遺族をはじめ多くの方にとっては、お経を聞きながら、故人への思い、死の苦しみや愛別離の苦しみとの葛藤など、様々なことがあり、退屈だとお感じになることはまずないのではないかと思います。僧侶としてご遺族の方に接していて、大抵は悲しみであったり、いろいろな思いの中でお経を聞かれていて、「ありがとうございました」とお礼を言ってもらいます。

 

人前式の葬式はこれからの葬儀の一つのあり方でしょう。ただ、僧侶に対して一般的に言われている悪いイメージだけで仏前式の葬式を敬遠されるのは残念です。食わず嫌いではなく、仏前式も選択肢の一つとしてお持ちいただきたいです。死は人生の締めくくりであり、誰もがたった一度しかありませんから。

 

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