「自然」から切り離そうとする現代社会

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「自然」から切り離そうとする現代社会

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2020/08/24 「自然」から切り離そうとする現代社会

先に書いた「共感力」と少し関係することなのですが、現代社会は、自然環境から切り離す歴史ですね。特に西洋は自然を克服し制御しようとする思想が強かったわけですが(近年はそうではない面も出てきていますが)、日本は古来より自然と共生する思想が強かったように思いますが、西洋文明を模倣した結果、同じように自然界から離れようとして、都市文明が発達しました。

 

しかし、私たちはどこまでいっても自然界から抜け出すことはできないし、共存していかなければ、私たち人類自体が終焉を迎えます。もしかすると、終焉は遠い未来に決まった定めなのかもしれませんが、それは今考えても始まらないので置いておきます。

 

以前、東京大学名誉教授の養老孟司氏がおっしゃっていたことが私にはずっと心に引っかかっています。曰く、まず水洗トイレ。この身体から、大小便が出るのは生理現象ですが、これをまず水洗トイレが切り離した。まさに臭いものに蓋をした。

 

公団住宅が全国各地に造られたとき、エレベーターがあっても、棺桶を乗せることを想定していなかった(今は、URの建物でも棺桶が載せられる設計になっているものはありますが、基本的には救急搬送の担架を念頭においているのだと思います)。自宅で亡くなるより病院で亡くなる人の方が増えた頃の話だと思います。

 

今は、新型コロナウイルスという想定外の「敵」が現れました。その結果、葬儀等に人が集まることができず、オンライン葬儀なども始まっているようですが、死との遭遇が、ますます減少している。

 

生と死は表裏一体です。玄関は出口でもあり入り口でもありますが、この世に入ってきたら、今度は出ていかねばならない。これは例外のない真理です。生と死は、切り離せないのです。

 

それを切り離そうとした。死を忌み嫌うだけで、まるでこの世の生だけが尊い風潮になった。

 

生は尊い。命は尊いです。自然界から預かった命。預かった命をバトンタッチし、また、自然界にお返しする。私が命を生きているのではなく、命が私を生きているのです。命が玄関からさようならということが死であって、それは生の締めくくり。

 

自然界と切り離すことはできないこの命。いくら都市文明が進展しようとも、これだけは、動かすことはできないのです。

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