法要の意味<その1>

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法要の意味<その1>

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2020/09/20 法要の意味<その1>

中日新聞9月17日の「発言」欄に、23歳大学院生からの以下のような投稿が掲載されました。

法要 集うことの意味は
亡くなった叔母の四十九日法要があり、僧侶の読経とセミの鳴き声が交錯した。ふと、理系の大学院生である私は思った。
お経をあげたからといって故人が本当に喜んでいるかどうかは分からない。死後の世界を知らない私はそれを判断するだけの科学的根拠を持ち合わせていない。どうして法要に集う人たちは皆黒い衣服をそれぞれ身にまとい、数珠を手に同じ方向へ手を合わせるのだろう。それに何の意味がある?
よくよく考えて私はある結論に達した。法要というこの独特の雰囲気を生みだしていくこと自体に意味があるのではないか、と。
手を合わせて目をつむり祈りをささげる。故人との記憶をよみがえらせながら、家族をより大事にしていこうとの思いを一層強くしていった。健康であることに感謝する気持ちも生まれてきた。法要という場に皆が集い、思い思いにさまざまな気持ちを抱くことにこそ意味があったのだ。私はそう感じた。

 

法要を肯定的に捉えているのか否定的に捉えているのか、読み方によってどちらとも言えそうですが、何はともあれ肯定的に捉えられているのであろうと、私は感じました(裏話的に申せば、大学院生の投稿を記者が要約的に書き直しているでしょうから、投稿者の意を全て汲んだ文章かどうかは、わかりません)。そんな彼の思いに対する回答になっているかどうか、結局私の自己満足に過ぎないかもしれませんが、いろんな思いが込み上げてきましたので、ここで引用し、少し関連させてお話ししようと思いました。いつものごとく話が長くなりますので、3回(予定)の連載形式で書きます。

 

お経をあげたからといって故人が本当に喜んでいるかどうかは、私もわかりません。むしろ、本来お経は生きている私たちにも向けたものです。じゃあなぜ現代語訳せずに漢文の音読みのままなんだ?というご批判はあろうかと思いますが(後述※)、本来的にはお釈迦様のお説教をまとめたものがお経ですから、亡くなった方だけでなく、私たちにも向けられているものです。ちなみに、法要とりわけ四十九日までの七日七日の法要は、追善供養といってお浄土に行けるよう、こちらから応援するような意味合いであったそうです。自分のためではなく、運動会でわが子を応援する家族のような感じでしょう。
ところが、浄土真宗は亡くなったら阿弥陀如来のお力で即お浄土に向かうと考えているのであり、追善供養の必要がありません。では、七日七日は不要なのか。最近されない方が多いですが、私は不要ではないと思います。それは、投稿者の大学院生も述べているように、法要という場に皆が集い、思い思いに様々な気持ちを抱くことにこそ意味があるのです。その場で死とは何か、生とは何か、この世とは何か。自分の生き様はどうか。そういったことをお経を聞きながら考える機会が法要だと思いますし、私は毎回そうお伝えしています。法要は様々なことを考える機会であり、わが身を以て死という人間があらがうことのできない事象を示してくださった故人への感謝の場である、と。これは1周忌、3回忌等の年忌法要でも同じです。

 

投稿者は、思考停止せずいろいろ考える機会を与えてもらったのですから、法事に参列した意味は、その意味では、あったのではないかと思います。(つづく)

 

(※)キリスト教の聖書・聖歌は日本語なのに、仏教ではお経はなぜ漢文音読みなのか、私も勉強不足で歴史的経緯はよくわかりません。翻訳が元の意味を正確に反映しているかわからないという話からすれば、サンスクリットであるべきでしょうが、僧侶でもサンスクリットはごく一部の人しか意味がわからないですね。玄奘三蔵が命がけで中国に持ち帰った教典を翻訳してくださったからこそ、日本人もすんなり受け入れられたという面もあるでしょう。今ではサンスクリットの原典と照らし合わせながらの研究も進んでいます。

では、日本語現代語訳すればいいわけですが、そこはやはり、「感じろ」ということなのかもしれません。有名だったカンフースターのブルース・リーの映画の名言で「Don’t think, feel(考えるな、感じろ)」というのがありましたが、そういう意図があるのではないか。日本語訳を読むとなるともっさりとした感じがしますが、漢文音読みだと歌のように読めます。実際、ありがたく感じてくださるご門徒さんも少なくありません。とりわけ大勢の僧侶・ご門徒さんで一緒に唱和すると荘厳です。法話や和讃(加えて仏教聖歌も)は日本語ですから、そちらも参考にしながら、お経を感じていただくのがいいのでしょう。

 

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