法要の意味<その2>:「理系の頭」と宗教

超願寺

06-6631-8956

〒556-0016 大阪府大阪市浪速区元町1-12-3

lv

法要の意味<その2>:「理系の頭」と宗教

ブログ

2020/09/21 法要の意味<その2>:「理系の頭」と宗教

前回(法要の意味<その1>)に引き続き、考えさせられる大学院生の新聞投稿に関連して、お話しします。

 

タイトルに理系の頭と宗教と書きましたが、理系的には、どうしても科学的根拠ということを考えるようです。件の大学院生も、「死後の世界を知らない私はそれを判断するだけの科学的根拠を持ち合わせていない」と述べています。私は文系ですが、法律学でも理論的根拠にはうるさく、なぜそう言えるのかということは突き詰める方です。僧侶としては、「ま、いいか」と思うこともありますが。

 

私もあの世のことは全く知りません。誰もこちらの世界に還ってこないのですから(往還二回向など真宗の教えはさておくとしまして)、きっといい世界なのだろうと思うことにしています。

 

ただ、理系的に考えても、あの世というか、例えば輪廻転生は説明がつくのではないかと思ったりします。

 

私たちは死んだら土に還ります。日本は現代では土葬ではなく火葬が一般的なので、土に還るという印象がないように思いますが、それは人間の体の大半が水だから、焼けば消えてなくなる(ように見える)だけであって、この地球上の様々な要素(「元素」と言ってもいいのでしょうけれど、正確ではないかもしれませんのでぼかしておきます)と混じり合って、土に還り、水に還り、空に還っていると言えなくはないでしょう。お骨は墓地に埋めておくとそのうち消えてしまいますから土に還ったわけです。

 

そして、またそれら地球の様々な要素が一体化して、母親のお腹の中に宿り、この世に生まれます。私たちは、自然の循環サイクルの中に組み込まれた生物であって、亡くなったら母なる大地に還る。そして、母なる大地から次の生命が生まれる。お浄土と母なる大地。違うものかもしれないが少なくとも対比することはできます。大日如来が一番太陽と対比しやすい仏様ですが、阿弥陀如来にしても、太陽や地球といった人智を超える存在という意味で対比できます。

 

間違っていたらごめんなさい。でも、化学や物理については素人の私が、ごく素直に考えればそういうことではないでしょうか。私たちは、目に見えない極微小なレベルで、明らかに輪廻転生しているのです。必ずしも人間に生まれ変われるとは限りませんが。

 

見えること(だけ)が正しいとも限りません。よく例として挙げられる実験がありますが、光の屈折により矢印が反対向きになってしまいます。(実験映像は、例えばこちらをご覧ください。)見えることが必ずしも正しいわけではなく、見えないことが無いこととイコールではありません。マイナスの例えになってしまいますが、世界を脅かしている新型コロナウイルスは、目に見えないですが、現に存在しています。顕微鏡では見えるのでしょうけれど。

 

宇宙飛行士のように、思い切り理系頭の人が、宇宙から帰還して宗教に目覚めることがあるという話はよく聞きますが、理系頭を突き詰めると、どうしても科学的根拠をもって説明がつかないことがある。そこに、神の存在を認める気持ちになる、ということのようです。反対に数学者は、天体の動きが精緻な数式で表されることに美しさを感じるようですが、これもまた人智を超えた何かがあると言わざるを得ない。

 

仏教でなくてもいいけれど、生きている以上、宗教は持たずにはいられない。死に対する恐怖を持っている以上、人間とはそういう生物ではないかと思います。科学的根拠は持ち合わせていませんが。

 

ちなみに、同じ黒い服で同じ方向に向かって手を合わせるという動作は、正しいのか正しくないのかという点では、私は正しいと思います。マナーというものは全てに理屈があるわけではありません。ただ、そこにいる人が皆気持ちよく過ごすためのものであり、人の死を悼み悲しんでいる中でショッキングピンクやら鮮やかな紫の服を着るのはおかしいでしょうし、同じ黒い服を着るという暗黙のルールにしていれば、急いで集合せねばならないときも、どんな服にしようかと考える必要がありません。もちろん黒でなくても、華美でなければ構わないとは思います。

 

同じ方向に向いて手を合わせるというのは、これは仏壇ないし故人のご遺影・遺骨の意味でしょう。お寺に出向けない人のために、各家家に仏壇をと、仏教を国教としようとした天皇が命じたのが始まりとされています。それに向かって同じ思いで手を合わせる。寺や神社に行って、参拝客が拝んでいる本殿以外を向いて手を合わせるのはおかしいのと同じです。自分なりに意味があれば、別の方向を向いて拝んでもいいでしょうけれど。(つづく)

 

TOP