お寺に、勝ち組、負け組という発想はおかしくないですか?

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お寺に、勝ち組、負け組という発想はおかしくないですか?

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2024/03/22 お寺に、勝ち組、負け組という発想はおかしくないですか?

私の生まれ育ったお寺であり、現在住職としてお預かりしているお寺は、ワンオペの小さなお寺です。

 

以前、お寺の将来を案じて色々取り組んでいる団体の、「勝ち組」選抜のサイトへ登録申請したことがあります。不合格でした。不合格の理由は本音なのか建前なのかは分かりませんでしたが、住職の私が兼業していてお寺になかなかいないだろうから、訪問客があっても住職に会えませんねということでした。

 

それはよく分かりますので、一応納得したのですが、お寺に住職がずっと居続けられるのは、ワンオペでないすなわち副住職なり役僧なりを雇えるだけの余裕があるお寺ということになるでしょう。もちろん寺族(住職の家族)でもいいのですが、親子双方が寺のことだけして暮らせるお寺は多くはないです。すなわち、住職は寺専業であっても、子供たちは別の仕事をしていることがあります。住職が兼業していれば、なおさら子供たち後継者は別の仕事をしないと暮らしていけません。

 

皆さんお寺にどのようなイメージを持たれているでしょうか。京都などの大寺院を思い浮かべられるのではないでしょうか。しかしながら、全国にコンビニより多いと言われる寺院のほとんどは零細であり、ワンオペないし家族だけでの経営であり、さらには無住のところも少なくありません。

 

寺院数では、京都よりも愛知や大阪の方が多いようですが、京都は大寺院が多いので、お寺が多いイメージを持たれる方が多いと思います。しかし全国的には小さな寺院が圧倒的多数です。企業と同じですね。大企業は1万社もないと言われていますが、中小企業は何百万社とあります。その中でも社長1人で切り盛りしている会社や個人企業は多数あります。

 

目立つことで、そこに人が集まる。テレビで取り上げられると人気の出る飲食店があるように、目立てば、あそこにお寺がある、”映える”神社があるとなりますね。

 

前述の「勝ち組選抜登録サイト」システムはそれを狙っているわけです。そのサイトに行けば、担当者が選抜して合格した「勝ち組」の寺院が掲載されています。担当者は、説明会ではっきりとおっしゃってました。「勝ち組の寺院を集めたサイトで、さらに勝ち組の業績を上げることで寺院業界全体を嵩上げしたい、トリクルダウン(勝ち組からのおこぼれが負け組にもまわってくるようになるとする考え方)です」と。

 

一つの考え方としてありうると思い期待していましたが、自分が不合格になってつきものが落ちたように、そうだ、この考え方は格差社会を助長する考え方じゃないかと考えを改めました。

 

上述の団体の批判をするつもりはありません。寺院業界を発展させようと努力されていることには敬意を表します。ただ、資本主義そのものじゃないかと。資本主義は、荒っぽく言えば格差がないとダメなんです。勝ち組がどんどん勝って、負け組はかなりの数撤退する。適正な寺院数へのバランスとも言えるかもしれませんが。負け組におこぼれがまわってくることはありません。それだけ人間は強欲であり、トリクルダウンは空虚な理論です。

 

勝った負けたと言っている段階で、社会の歪みそのものです。私は私。私がお預かりしているお寺は、他のお寺とは全く違う、オンリーワンのお寺。江戸時代から十六代続くお寺です。

 

有名なお寺だけではなく、近隣のお寺に関心をお持ちいただければありがたいです。有名ではなくても、きらりと光るお寺が、身近にあるかもしれません。

 

(4月3日、若干文章を修正しました。)

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